Wind of Destiny

やる気の無い雑記帳

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想起(最終話)

お待たせしました(待ってない)最終話。

↓本文


「はいもしもし?」
電話を取る俺に聞こえたのは良く知った声。
「徹、今すぐ戻ってこい!」
怒鳴りつけるような克也の声。
「はぁ?お前何言ってんだよ。」
「いいから帰ってこい!」
「何があったんだよ。」
慌て振りからすると、ただ事ではないようだが…。
「理穂が事故った、意識不明らしい。」
「……はっ?」
思考停止。
というかそもそも、何故俺に電話をする。
「顔を会わせたくないのも分かるさ。
 でも、付き合ってたどうこうの前に、お前等幼馴染だろ。
 二度と会えなくなるかもしれないんだぞ?」
二度と会えなくなる?
同じ世界にいれなくなる?
もう過去でしかなくなる?
「そんなのは嫌…だ…」
もう会えないのは仕方ないけど、せめてアイツには笑顔でいて欲しい。
アイツがいなくなるなんて嫌だ!

時刻は深夜、もう何時間かしたら夜が明け始める頃合。
「早かったな。」
「理穂は?!」
「まだ、手術中だ。」
閑散とした待合室、克也に真人、優衣もいた。
「手術室の前に理穂の親父さんがいる。
 顔見せてくるか?」
「あぁ…。」
場所を教えてもらい、俺は小走りで向かう。
「おじさん、お久しぶりです。」
「あぁ、徹君か。
 まだ手術中だよ…」
隣に腰掛ける。
「事故は、理穂がちょうど旅行から帰ってきたときに起きてね。
 あの子も気が緩んでたんだろう。」
「状態は、どうなんですか?」
「非常に危険な状況らしい…説明されたが良く分からない。」
そう言って口を閉ざすと、祈るような仕草をする。
長く重苦しい時間が過ぎ去っていった。
夜が明けて暫く、手術室から医者らしい男が出てくる。
おじさんが駆け寄ると、説明していた。
「…ひとまず手術は成功しましたが…
 意識が戻るかどうかはわかりません…」
近いはずなのに遠くから聞こえる声…
歪んでいく景色…

「おはよう理穂。」
意識が戻らないままの理穂は、死んだように眠り続けている。
俺は毎日、面会時間一杯病室にいた。
話によると、信号無視して交差点に進入してきた車が、雪でスリップ。
そのまま理穂の方にきたらしい。
「今日は寒いぞ、朝起きたら大雪だった。」
物言わぬ理穂に向かい、俺は話かける。
手術の後、克也達のところに戻った俺は、話を聞いて驚く事になる。
旅行先は、俺と同じところだったらしい。
つまり、あの時みたのはやっぱり理穂だったって事になる。
あの時、追いかけていればもしかしたらこんな事になってなかったかも。
むしろ別れてなければ、こんな事にはならなかったかも。
そんな事を言ってもどうしようもないが、そう思わずには居れなかった俺。
「神様が罰を俺に与えたのかもな。
 ゴメンな、お前にまで被害きてしまったみたいだな。
 ホント、ゴメンな…」
理穂の手を握り締めたまま、俺はそう呟く。
目の前が涙でにじむ。
……
そろそろ面会時間が終わる。
俺は理穂の手を離し、病室を後にしようとする。
「また明日な、理穂。」
頭を撫で、何の表情も出て無い顔を眺める。
背を向け、病室を出ようとする。
『徹、行かないで。』
はっと振り向く、しかし目も開いてないし、他に反応がない。
でも何故か呼び止められたような気がした。
俺は一度病室を出て、真人に連絡する。
「悪い、今日休ませてくれ。」
「…病院か。分かった、どうにかする。」
「すまん。」
そう短く告げ、再び病室に戻る。
面会時間を過ぎて病室に残る俺。
ずっと手を握ったまま、何も言わず待ち続ける。

何も言わないのが辛くなった俺は、独り言を呟く。
「今だから言うけどさ。
 別れた理由、結局俺が悪いと思うんだ。
 俺が我慢すりゃ良かったんだよな、あの時謝ってれば…
 きっとこんな事にならなかったよな…ゴメンな。」
また目の前が涙で滲む。
夢であって欲しい、これが夢であってくれれば。
そう思っても、確かにここにいる俺。
何も言わない理穂。
「ゴメンな…、ゴメンな…」
握ってる手が、こっちの手を握り返すように動く。
「ばかっ、何泣いてんのよ…」

「良い天気だな、寒いけど。」
珍しく晴れ上がった空。
周りの積雪は、陽が差してキラキラ輝いている。
「寒いから病室に戻ろうよー。」
「外出たいって言ったのはどこの誰だよ。」
「徹じゃない?」
「なら俺だけここいるよ。」
「じゃあ一緒にいる。」
車椅子を押して、俺はそこらを歩く。
あの後、意識が回復した理穂は快方に向かっていった。
奇跡なんて信じる俺じゃないが、あの時は奇跡を信じてもいいと思った。
「なぁ」
「ねぇ」
二人の声がかぶる。
「お先にどうぞ?」
「徹から先でいいよ。」
譲り合うお互い、結局折れたのは俺だった。
「なぁ理穂、あの時はゴメン。
 もう一度だけ許してくれないかな?
 また、一緒に居れないかな?」
長らく言えなかった言葉、言いたかった言葉。
「うん、いいよ。
 私の方こそごめんね。」

それから半年が過ぎ。
理穂はすっかり以前の生活を取り戻していた。
今は晩飯を食い終え、車で走っていた。
「どこいくの?」
「良いとこ。」
そういって山の方へ車を走らせる。
「ふーん、良いとこってそういう事かぁ。」
ニヤニヤ笑う理穂。
違うっての…
そうあの場所、夢なのか現実なのかわからないが、俺がプロポーズしたあの場所。
俺は決意を胸に秘め、目的の場所まで走らせる。


「おはよ…あー体が痛い。」
昼頃になってようやく目が覚めた俺。
既に昼飯が用意してある。
「遅いよ、もう昼だよ?」
「しょうがないだろ、あんなに遠泳したら体も疲れるってもんだ。」
テーブルにつき、昼飯を食う。
「今日が休みで良かったね。」
「そうだなぁ、仕事だったら死んでたな。」
「死ぬなんて軽く使うものじゃないよ?」
そうだな、お前が言うと説得力がある。
昨日の夢で、ようやく俺は全部を思い出していた。
なんで、あんな重要な事忘れてたんだろうな?
まぁいいか、思い出せたんだしさ。
「さて、今日は家でゴロゴロしよう。」
「えー、良い天気だよ?外出ようよ。」
「暑いから嫌だ。」
そんな事言いながら、結局俺は外に出るんだろうなとか思っていた。

この数日後、家族が一人増えると知った俺は大喜びする事になるが、今はまだ知らない。





後書き
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